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↓最近三話分のログ | ||
ありったけの愛で | 【千影×四葉】 | 2006/08/03 |
貴女の為に出来る事 | 【春歌×鞠絵】 | 2006/06/25 |
Cassis | 【千影×咲耶】 | 2006/05/24 |
遠くに聞こえる賑やかな喧騒。 今宵は星が綺麗だ。 私はテラスから夜空を見上げる。 今日は妹の誕生日。 いつもの様にこの家に集まり、いつもの様にパーティーを開く。 其れは私達の行事の様な物。 とても、とても、倖せな日だ。 其の倖せな日が、今年から一年に三度も増える事になった。 君が来てからもう四ヶ月になるか。 人を愛するには、十分な時間だ。 一目見る瞬間さえあれば、人は人に恋を出来るのだから。 私は愚かだった。 愛なんていらない。 大切な二人を守れるなら。 そう思っていた。 でも。 私には守りたい家族がどんどん増えていった。 まったく、おかしな話だ。 今までこんな事は無かったよ。 この私が世界の平和を願うなんてね。 自分とあの人さえいれば良いと思っていた頃の私と比べたら、大層な違いだ。 世界。 私の手の届く世界。 其処さえ守れるなら、私はどんな事でもしよう。 ・・・いけない。 私はもう、一人じゃない。 十二人で守れば良いんだ。 気負う事は無い。 一人だけでは決して守れやしないのだから。 そうだろう?咲耶くん。 「千影チャマ」 いつからだったか。 振り返れば其処には大切な妹がいた。 「やあ・・・・・・四葉くん・・・・・・」 名前を呼ばれ、彼女はにっこりと笑んだ。 手を胸の前で組みながら、恥ずかしそうにテラスへと足を踏み入れる。 「少し一緒に居ても良いデスか?」 私の顔を見つめる彼女の視線から逃れる様に、私は空へと視線を戻した。 空は相変わらず快晴。 星々が煌めき、其れを月が纏っている。 「ああ、勿論・・・・・・」 彼女が私の横へ小さく駆けた。 髪が風に靡き、シャンプーの良い匂いがする。 胸が苦しい。 今直ぐにでも彼女を抱き締めたい様な、寂しさとは違う例え様の無い感情。 理性が崩れそうになる。 「でも、良いのかい・・・・・・?今日のパーティーは・・・・・・君が主役だろう・・・?」 私は取り繕う様に言葉を発した。 「はいっ、ついでに千影チャマを呼んでくる様にも云われましたから!」 ・・・咲耶くんか。 相変わらずお節介焼きだ。 まあ、悪い気はしない。 「其れで・・・何か話でもあるのかい・・・・・・?」 「あ、はい。訊きたい事がいくつか」 彼女は何処から取り出したのか、メモ帳と万年筆、そして何故か虫眼鏡を手にしていた。 流石は探偵見習い・・・と云ったところか。 思えば、彼女に心惹かれる前は彼女の好奇心が鬱陶しかったな。 見られたくないところまで見付けられてしまいそうで。 あの頃の私は本当に、臆病だった。 本当は寂しがり屋な、あの頃の・・・ちかのままなのに。 強がって一人になろうとした。 其れでも心の奥底ではあの二人がいる事が支えになっていたんだ。 「何でも訊いてくれて良いよ・・・・・・ただし、其れが今年の誕生日プレゼントだけどね・・・・・・」 私は意地悪に笑った。 「あぅ・・・其れは困ります・・・」 彼女は迷う様に、メモ帳の上で万年筆をフラフラと走らせた。 そんな彼女の様子を見て、私は思わず声を出して笑う。 「フフッ・・・・・・冗談だよ・・・・・・」 からかわれた事に気付き、彼女は頬を膨らませた。 嗚呼、だから君は愛らしい。 私は彼女の髪を撫でた。 「え、えっと!初恋はいつでしたか!?」 顔を真っ赤にした彼女は、照れ隠しの様に私に問う。 初恋、か・・・ 「君が教えてくれたら・・・・・・私も教えるよ・・・・・・」 「ふぇっ!?」 彼女は大きな目を見開いて、硬直した。 こんな冗談を云うようになったのも、誰かさんの影響かな・・・ 「四葉の初恋は・・・」 小さな声で始まり、其れはどんどんと小さくなっていく。 其れでも聞こえた。 『千影チャマと初めて逢った時に』 ・・・そうだったのか。 知らなかった。 いや、知ろうとしていなかった。 私は何も。 私の中で、彼女を知りたいと云う感情が急激に大きくなるのを感じる。 俯き、前髪で顔を隠した彼女を、私は抱き締めた。 「ちか・・・」 「君の事・・・・・・もっと教えてもらっても良いかい・・・・・・?」 私の名前を呼ぼうとした彼女の言葉を遮り、私は想いを口にした。 あの匂いが、私の腕の中に居る。 私が知っているのは彼女の香りだけなのか? 違う。 だけど、もっと知りたくて知りたくて仕方が無い。 そうか。 彼女も同じ気持ちだったのか。 だから私を探偵の様に調べたりしていたのか。 其れを私は・・・ 知らないと云う事は・・・知ろうとしない事は何と愚かな事だったのだろう。 「はい・・・四葉の事で良ければ何でも・・・・・・あっ、でも千影チャマもちゃんと教えてください!」 焦った様に早口で、私の腕の中で躰を捩じらせながら彼女は云う。 上目遣いで彼女は私の顔を見つめる。 私は、微笑む。 今までと違う微笑み。 新しい感情。 新しい愛が始まったのか。 もしかしたら、此れが初恋なのかもしれない。 ・・・まさか、な。 「ありがとう、四葉くん・・・・・・」 私の言葉に、彼女はまた俯いた。 躰を弱く抱き返される。 私の胸に顔を埋め、くぐもった声で彼女は云った。 「誕生日プレゼントが欲しいんデス・・・『四葉ちゃん』って、呼んで欲しいんデス・・・」 私は驚いた。 他の妹達には『ちゃん』を付けて呼んでいたのに。 何故彼女には・・・四葉ちゃんにはそうでなかったのだろう。 「四葉ちゃん・・・・・・」 そう口にした時、何かが変わった気がした。 愛でもなく、恋でもなく。 勿論、四葉ちゃんの事は愛している。 でもそう云った感情とは全く別の何かが、繋がった。 其れは・・・絆、とでも呼べば良いのだろうか。 いや、呼び方なんて関係ないか。 四葉ちゃんが私にとって更に大切な人になった。 其れだけが確かな事実なのだから。 この絆を通じて、改めてこの言葉を君にあげたい。 「誕生日おめでとう・・・・・・四葉ちゃん・・・・・・」 FIN. |
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