貴女の為に出来る事



貴女の笑顔が好きです。
初めて貴女の笑顔を見た時から、ワタクシの心は奪われていたのかもしれない。
でも、貴女はずっと泣いていますね。
ワタクシは気付いていた。
貴女の笑顔の向こう側に、悲しみがあるのを。
お見舞いに行くと見せてくれる笑顔。
其れにはワタクシや他の姉妹の方々に対しての羨ましさが隠れていた。
遠い場所で姉妹が皆で暮らしているのを思うのは辛かっただろう。
独りで病気と闘うのはどんな気持ちだったのだろう。
ワタクシには分からない。
でも、分かりたかった。
貴女の気持ちを知れたら。
貴女の言葉を聞けたら。
強く望みました。
でも、貴女はそんな事は何も漏らさなかった。
いつも笑顔を見せて、一人で闘っていた。
いつ治るか分からない病気と云うのは怖かったでしょう。
寂しかったでしょう。
辛かったでしょう。
だからこそ、泣く事が出来なかったのですね。
人を頼る事が出来なかったのですね。
鞠絵ちゃんは云う。
今は倖せだ、と。
倖せ過ぎて怖いのだと。
泪の雫が頬を幾度もなぞる。
重力に従って落ちる雫を私は掬い上げる。
温かい泪。
喜び。
嬉しさ。
そして、倖せ。
そんな感情が流させる水。
ワタクシは鞠絵ちゃんをそっと抱き締めた。
何も云えない。
何を云えば良いのか分からない。
そんな理由もあったのかもしれません。
でも、どんな言葉よりもこうするべきだと思った。
だから、ワタクシは鞠絵ちゃんを抱き締めた。
ワタクシが泣いたら、貴女はこうしてくれたでしょう?
笑顔で、私の震える躰を抱き締めてくれたでしょう。
温かい躰、指先。
鼓動が伝わる。
とても早い鼓動。
嗚呼、貴女が今此処に居てくれて、良かった。
貴女の力になる事が出来るから。
貴女は一人で悲しみを背負い込み過ぎる。
ずっと、貴女は強い人間だと思っていた。
でも違う。
貴女はとても繊細で、弱い人間。
其れでも潰れそうになりながらも此処まで来た。
貴女の痛みを、ワタクシにください。
こんな事を云って良いのか分からないですけれど。
貴女が泪を見せてくれた事、とても嬉しいです。
一緒に泣く事だって出来るから。
もう貴女は病気に怯えなくても良い。
寂しい想いをしなくても良い。
ずっと一緒に居れる。
大切な家族と。
やがて外に出る事も、学校に通う事も出来るでしょう。
貴女が倖せに満たされるまで。
この倖せに慣れるまで一緒に泣きましょう。
泪の後には、笑顔があるから。
泣いて。
泣き続けて。
やがて貴女が泪を拭ってくれるなら。
ワタクシは貴女に笑顔を与える為に、何でもしましょう。
貴女を絶対に独りにしません。
笑顔の貴女が好きだから。
貴女の笑顔が好きだから。
叶うなら、笑顔の貴女に、ずっと傍に居て欲しいから。
だから。
『傍に居る』
其れがワタクシの、貴女の為に出来る事。



FIN.


     
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