Pink Rose






近頃、私はおかしい。

数ヶ月前に出逢ったばかりの一人の少女に、笑顔を見せてしまいそうになる。

今まではそんな事、一度もなかった。

自分を理解してくれるあの二人にしか、向けた事も、見せようと思った事もなかったのに。

おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい・・・

その少女の名前は四葉。

この世界で再び姉妹として出逢う事は知っていた。

だから、出来る限り避けようとした。

しかし彼女は私がいくら拒んでも、傷つけても、それでも自分から近付いてくる。

止めて欲しかった。

やがて、拒むのが辛くなっていった。

そして現在、気が付けば私は彼女の近くに存在しようとしている。

私が私の知らない私へ、変えられてしまう・・・





「くしゅんっ!」

・・・・・・また・・・か・・・

背後から聞こえて来た数十回目のくしゃみに、私は呆れと嘲笑と諦めを心中で反響させた。

それは慣れた物なのだが、不快な事に変わりはない。

第一、私の通学路に、日本の学校にはまだ通っていない彼女が居るのは明らかに異様なのだ。

「居るのは分かっているよ・・・・・・だから、私の背後に立つな・・・」

私は歩む速度を変える事もせずに、彼女に忠告した。

その名前を口にするのも嫌で仕方がない。

「あぅ〜・・・ち、千影チャマ!き、奇遇デスね!あっ、別に隠れてチェキしてた訳じゃなくて・・・」

続けて云い訳を云い掛け、彼女はまたくしゃみをした。

・・・姦しい。

私は眉間に薄く皺を寄せながらも無視し、家路を歩み続けた。

先程のは話し掛けた訳ではなく、ただ単に背後に立つのを止めて欲しかっただけだ。

何を勘違いしているのか、未だに私の聴覚には雑音が聞こえてくる。

本格的に不快になり、初めて歩む速度を早めようとしたその時、視界に突然彼女が入ってきた。

「あのぅ・・・千影チャマ、ちょっと良いデスか?」

私は進行方向に出現した障害物を避けようともしなかった。

流石に態々道を塞いでおいてぶつかるのは失礼だと思ったのか、彼女は自分から少し退いた。

「・・・何の用だ・・・」

私は道を明けた彼女に今日初めて答えを求める言葉を放った。

無意識に、威圧するような口調で。

しかし、彼女は全く動じずに、両手を胸の前で組ませ、目障りにも軽く跳ねた。

「良くぞ訊いてくれました!是が非でも四葉と一緒にお昼を食べましょう!」

・・・・・・確かに今日は朝食すら摂っていない。

だが、だからといってこの娘と馴れ合うつもりなどは毛頭無い。

「良いデスか?」

期待を宿し、顔を私の覗き込んでくる少女の瞳を、直視する事は出来なかった。

私は否定する訳でも、肯定する訳でもなく、ただ呆れた。

そして、溜息。





「それって、好まれてる証明じゃない」

私の向かいに座っている咲耶くんが、アイスミルクティーの氷をストローで突付きながら云った。

私は、咲耶くんと共に喫茶店『GreenChristmas』へと来ていた。

今日は休日だが、日が沈み始める時間帯の為、周囲に客の気配は少ない。

それは、私が彼女を誘った理由、相談を受けて貰うと云う場所には最適だった。

「・・・・・・私は『それ』が・・・嫌なんだよ・・・」

私は小さく首を振ると、咲耶くんは微笑と苦笑の狭間の笑みを浮かべた。

「全然変わらないわね・・・千影・・・」

そう云った咲耶くんの表情は先程の物から苦笑が抜けた物だった。

姉と云う、私よりも高い位置から見守られている事に、嬉しいような、悔しいような、微妙な感覚を憶える。

・・・私は自分で如何対処すれば良いか分からなくなった時、その感覚を感じる為、彼女に相談を受けてもらう。

何時もそのような状況に陥る訳ではないが、その状況に陥った時の相談相手は何時も彼女だった。

そもそも、私には心を許している存在はこの世界に二人しかいない。

彼女と、そして衛くんだ。

確かに、他の妹達にも私は興味を持っている。

だが、心を許せるのは彼女達だけだった。

咲耶くんは冷静に、第三者としての視点から最適な道を照らしてくれる。

そして、衛くんは私とは対象的な意見を出し、私の思い付かなかった道を示す。

出来れば二人共に意見を聞きたかったが、今衛くんには私の悩みの種を連れ出して貰っている。

私の後を尾行し、何かと関わりたがる・・・四葉を。

「変わったよ・・・・・・あの頃と比べれば・・・・・・十二分にね・・・」

自嘲気味に云った後、私は自分の左手を見つめ、それを固く閉じては開くと云う動作を数回繰り返した。

咲耶くんもそれを目を細めて見つめていた。

そして、私が手を下ろすと、溜息のような息を吐いた。

「それで・・・如何したの?」

私は答えずに、俯いて目の前のアイスコーヒーのグラスからテーブルへと流れる水滴を見つめる。

暫らくすると、それが急に視界の上部へと消えた。

「逃げても何も変わらないのよ・・・お願い、話して」

「・・・・・・ああ・・・」

私が頷くと、咲耶くんは私にコーヒーを返した。

そして受け取ったそれを先程と同じ場所に置くと、私は瞳を閉じ、少し冷えた手を瞼に重ねた。





「良いデスか?」

先程と同じ言葉を吐いた。

私は出逢って初めて、彼女の瞳を自分の意思で覗き込んだ。

笑窪を作り、期待と好奇心に満ちた表情は愛らしく、瞳は真っ直ぐに私を見つめている。

まるで物事の良し悪しが理解でき始めたばかりの子供が雪を見つめる瞳に似ていると思った。

・・・・・・何故私はそんな比喩を用いたのだろう。

それはおそらく・・・私にもそう云う時期があった事を示している。

そして、私は実際に遥かな空から降りてくる雪に興味を注いでいた体験があるのだろう。

それを忘れる事が悲しいと云う事を忘れていた。

目の前の少女と違い、もう・・・私にはそんな表情は出来ない。

「君は・・・」

今私は・・・どんな表情をしている?

「君は私を・・・・・・愛しているのかい・・・?」

私は単刀直入に訊いた。

瞬間、彼女の表情から明るさが消え、ゆっくりと視線を落としていった。

問いを問いで返すのは卑怯かもしれないが、その問いに対する答えは私には必要な物だった。

決断するのに必要になると思った。

別れを告げると云う決断に。

沈黙は長く続く。

やがて、彼女は顔を上げた。

それは熱を帯びて紅く染まっていた。

「はい・・・そう、デス・・・」

彼女はゆっくり、しかしハッキリと云った。

私の中の何かが境界線へ踏み出すための壁を壊した。





私は一息吐き、アイスコーヒーを咽喉に流し込んだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

咲耶くんは黙り込み、テーブルの上で組んだ手を見つめていた。

「・・・呆れてるのかい・・・?」

私の、自分へ向けた嘲笑を咲耶くんは顔を上げて見ると、困った顔をした。

「ううん、そんな事・・・無いわよ・・・・・・ただ、凄いなって、思っただけ」

「凄い・・・?」

私は思わず訊き返した。

すると、彼女は組んでいる手の親指同士を一定の間隔で上下に、交互に入れ替えると云う行動を始めた。

それは咲耶くんが考えている時の癖だ。

遠くで床に食器の落ちる音が聞こえた。

「ええ。相手と自分の気持ちに気付いていて、それで訊いてたんだったら、ね」

咲耶くんは試すような瞳で私を見つめ、云った。

・・・・・・私は本当に気付いていたのだろうか?

咲耶くんの言葉から、自分自身への一つの疑問が浮かんだ。

おそらく私は知らなかった。

彼女からの愛情は知っていた。

だが、自分の・・・こんな気持ちになる事は知らなかった。

身近に居た人間と別れるのがこんなにも悲しいとは・・・思わなかった。

・・・いや、私は・・・忘れてしまっていた。

「如何?」

「・・・・・・・・・・・・・」

私は答えなかった。

答える事が出来なかった。

「・・・まあ、良いわ。先刻の続きを話して」

「・・・・・・ああ・・・」

私は逃げ道が出来た事を安堵しつつも、釈然とせずに話を続けた。





「四葉は千影チャマの事が大好きデス」

彼女は先程よりも早口で、もう一度云い直した。

そして、私から瞳を逸らす事はしなかった。

おそらく、この娘は私が答えを返すまで続けるだろう。

彼女のしつこさは私が最も理解しているつもりだ。

しかし、凛とした、真っ直ぐな瞳がこの後直ぐに壊れるのかと思うと、可笑しくて堪らなかった。

「・・・君は・・・・・・可笑しいと思わないのかい?」

見下すように、意識して視線を高くして私は云った。

「え・・・・・・何が・・・デスか?」

先程の静かな中にも期待を含ませた明るさは消え、訝しげな表情へと変わった。

口の両端が上がるのを堪え、君が訊いてきたのだろう?とでも云うように私は続けて云い放つ。

「私と君は同性だ・・・・・・分かるかい?」

私は、彼女の精神的苦痛を増やす為に、出来る限り返事をするような質問の仕方をした。

すると、彼女は眉の端を下げ、泣きそうな表情になりながらも、答えた。

「・・・はい」

「私と君は・・・どんな形であっても、親族だ・・・」

認めてはいないが・・・

その言葉はあえて云わなかった。

云う必要が無いと思ったからだ。

「・・・・・・はい」

湿った涙声で、やはり返事をする。

・・・いくら自分は勉強が苦手だと自称している彼女でも、もう・・・私の答えが分かっている筈だ。

だが、それでもその場から逃げようとはしなかった。

何故?

・・・其処まで現実が欲しいのか?

何故・・・

分からない、分かりたくもない。

しかし、望むのならば与えてあげるよ・・・・・・現実を・・・

私は次の言葉を最後の言葉にすると決めた。

口内に少量溜まった唾液を飲み込み、口唇を開く。

そして、その言葉を紡いだ。

花が枯れるように自然に・・・そして、もう戻る事が出来なくなるように・・・

「                   」

彼女の表情には悲しみ以外に何も映っていなかった。





・・・私が昨日の事を話し終えてから、既に十分近くが経過していた。

少なくとも、沈黙の中ではそれ程の重さに感じた。

やがて、溜息。

咲耶くんは組んでいた腕を解き、テーブルの上で両手を組ませた。

「・・・『普通、恋愛感情は成立しない』・・・ね・・・」

咲耶くんはまた考え、癖を始めた。

「・・・すまない・・・・・・ただ、その言葉が最適だと思った・・・・・・例外が在るのは分かっているよ・・・」

私は瞳を閉じ、頭を下げた。

「良いのよ。私達だって分かってるんだから・・・」

少し俯き、咲耶くんは左右に一度ずつ首を振った。

分かってる、か・・・

あの様子だと・・・彼女は分かっていなかったようだが・・・

「・・・・・・君達は強いね・・・・・・尊敬・・・」

してしまうよ、と続ける前に私は言葉を止めた。

いや・・・失った。

彼女が顔を上げる事で表情が鮮明に見えてしまったのだ。

悲しそうに、微笑っている顔が。

その表情は私が以前好意を寄せていた相手のそれと酷似していて、私の胸の古傷に沁みた。

血縁とは恐ろしい程に美しい物だ・・・

今この瞬間、再度それを思い知らされた。

「・・・すまない」

「・・・私は倖せよ・・・?」

咲耶くんは表情の中から悲しみだけを崩し、完全に優しさだけに満ちた微笑みで言葉を続けた。

表情を変えたそれが、咲耶くんが無理をして微笑っている事を証明していた。

中途半端な表情では・・・微笑みを保てなくなっている事を証明していた。

「私は・・・それでも、倖せを感じているわ・・・だから・・・」

「もう、止めてくれ・・・」

私が制止するのも構わず、咲耶くんは首を振った。

「だから、千影にも倖せになって欲しいの。私の倖せは分けてあげられないけれど・・・」

私は目頭の辺りが熱くなるのを感じた。

しかし、私が泪を見せる事は、この場の誰も望んでいなかった。

「本当に・・・すまなかった・・・」

私は心底悪気を感じ、謝罪する。

「謝らないで。今大切なのは・・・私達の事よりも、貴女の問題を解決する事でしょ?」

「・・・・・・ああ・・・」

私は自分でも聞こえない程に無言で、しかし空気を震わせて返事を返した。

「でも・・・」

咲耶くんは急に聲のト−ンを落とした。

「でも、先刻千影が云った例外の中に・・・如何して四葉ちゃんは入らないの?」

私は答えなかった。

すると、咲耶くんも黙り込んだ。

私が答えない限りそうするだろう。

私は咲耶くんが如何思うかを気遣いながら、口を開いた。

「・・・例外が一人だけでは・・・・・・所詮・・・」

例外でしかない、と言葉に出そうと思った事で、私はある事に気が付いた。

私は既に例外になっていたのではないだろうか、と。

目の前にいる姉と同じ人物を愛した時から・・・私も・・・

「・・・・・・まあ、良いわ」

言葉を放たない私を見て呆れたのだろうか。

仕方が無い、とでも云うように咲耶くんは眉の端を下げ、肩を竦めた。

「その後四葉ちゃんは如何なったの?」

咲耶くんは暗めになっていた聲を元のトーンに戻し、訊いてきた。

「放っておいた・・・・・・直ぐに立ち去ったから・・・・・・その後は知らないね・・・」

咲耶くんの表情がギョッとした。

「ちょっ・・・じゃ、じゃあ、ちゃんと家に帰ったかも分からないの?」

「・・・・・・生憎と云うところだ・・・」

溜息。

「ちょっと待って。電話するから・・・・・・と、その前に、決着を着けておきましょう?」

・・・彼女の次の言葉は分かりきっていた。

彼女は他人の人生に手を出そうとはしない。

例えそれが家族だとしても、だ。

選択肢を並べ、一つを選ばせる。

選ぶ事すらも強制ではない。

可能な限りの逃げ道を作ってくれる。

ただ・・・幾ら甘えても、拒んでも、決定権は結局始めから自分に有るのだ。

それでも私は咲耶くんに悩みの理由を話した。

聞いてくれる人が居ると云うだけで安心出来る事を、彼女は誰よりも最も知っている。

そして彼女は訊いてきた。

「千影は・・・如何したいの・・・?」

私の前に出された選択肢は一つだけだった。

そして、答えも一つしかない。

辿り着く先も、心の中に存在する悩みその物が決定していた。

それでも、私はゆっくりと考えた。

たった一つの、逃げる事の出来ない選択肢を、慎重に選んだ。

そして一息。

「私は・・・・・・」





私は、近所のかしのき公園に居た。

「まだ・・・・・・来ていないようだね・・・」

安堵の溜息を吐き、目的の者が来るのを待つ。

・・・咲耶くんは彼女をどのような口実で呼び出しておいてくれたのかは分からない。

あの後、私は咲耶くんと別れた。

咲耶くんは、電話も会計も自分が済ませておくから、と云って、私を微笑みながら見送った。

気が利くんだか、ただのお節介なのか・・・

私は呆れ半分に笑った。

そして、ふと自分の本心を咲耶くんが聞いてくれた事に感謝をした。

・・・・・・人を愛する事の難しさを知ったのはこれで二度目だな・・・

あの時も私は愚かだった。

手に入れたくて、早とちりをした。

そして今回は、失いたくなくて、拒絶していた。

それも、常識、見解、そんな下らない価値の存在を盾にして・・・煩わしく思い込むようにしていた。

愚かだ。

本当に愚かだ。

私の愛している二人の少女は互いに愛し合い、そして認め合っている。

好きになった相手が同性だった。

好きになった相手が姉妹だった。

彼女達はその事を・・・『ただそれだけの事』だと云う。

周囲の誰が何を云おうと構わずに仕合わせになった相手を誰よりも思いやっている。

・・・私は今、愛と云う言葉の意味を自分なりに解釈したつもりだ。

それを彼女が受け入れてくれるか分からない。

受け入れて貰えないのならば、受け入れて貰えるように変われば良い。

変えれば良い。

私はこの恋愛の結末を知っている。

それは先に述べた二人のように幸福な物ではない。

だからこそ、今からでも変える事が出来る。

変えようと思う。

何もしないのならば、変わらない。

だから、私は変えたい。

彼女と出逢った時に見えた幻覚が現実にならないように。

私を雁字搦めに張り付けて放さない過去の記憶をこの世の物としない為に。





・・・そして、何分かが経った。

公園の櫻が花弁が風に舞い、視界の中で八重て消えていく。

手を晒し、緩やかなそれに誓いを起てた。

もう無くさない、と。

「くしゅんっ!」

その時、背後からくしゃみが聞こえてきた。

ああ、あのくしゃみは・・・

花粉症の所為もあって、それは聞き飽きていた物だった。

しかし、今それが待ち望んでいた物のように感じる。

「ち、千影チャマ!?」

彼女の驚いた顔は少量の恐怖を含んでいた。

私に拒まれた悲しみを忘れていないのだろう。

・・・いや、忘れる事など出来るわけが無い。

私も・・・そうだった・・・

自分で傷を付けた彼女の心を、直してあげたいと思う。

そうだ・・・なら、私はしなければならない事がある。

「待っていたよ・・・・・・話したい事があるんだ・・・・・・【四葉ちゃん】・・・」

そして私は出逢って初めてその名前を呼んだ。

彼女の丸い瞳が大きく見開かれ、暫らく口をパクパクさせていた。

・・・・・・・やがて・・・・・・

「はい!何デスか!?」

その満面の笑みは私の網膜にハッキリと焼き付いた。

そして、気付けば微笑みを返している自分が居た。





「千影は如何したいの・・・?」

「私は・・・・・・人を愛したい・・・」

「本当に?」

「・・・ああ・・・」

「・・・なら、良いわよ。電話掛けて、四葉ちゃんを呼び出してあげるわ」

「・・・・・・待ってくれ」

「ん、なに?」

「少し・・・・・・・・・もう・・・少しだけ・・・」

「・・・千影・・・貴女・・・」

「・・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・もう、大丈夫だ・・・」

「うん・・・じゃあ、四葉ちゃんと待ち合わせる場所はかしのき公園で良いわね?」

「・・・聞かないのかい?」

「聞いて欲しいの?」

「そうだね・・・・・・遠慮しておくよ・・・」

「ウフッ・・・じゃあ・・・・・・いってらっしゃい」

「・・・・・・ああ・・・」





この世界で、この立場に存在していられる事を・・・今更、感謝している。

私は理解の良い姉妹達に囲まれていた。

だから、恵まれていた。

私は過去に、ある二人のおかげで、何時しか忘れていた微笑みを取り戻した。

そして今、愛すると云う行為の尊さと儚さを思い出した。

今なら、過去の過ちも、無駄では無いように思える。

今まで一番身近に存在し、私を理解していた自分を捨てる事への孤独から流した泪も・・・

私の中の鏡に映った愛を否定してくれた衛くんの強さも・・・

真実の愛の間違い探しをさせてくれた咲耶くんの優しさも・・・

拒まれても屈しない愛の強さをくれた四葉ちゃんの一途さも・・・

窈然な暗闇で見えない愛を一人で探していた自分の弱さも・・・

決して忘れない。

だから、今は上を向いて、もう無いそれに向かって云おう。

『さようなら、ありがとう』





FIN


     

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