雲路の果て



片思いの切なさに泣いた夜を幾つも過ごした。
私は強い人間なのだと思っていた。
思い込んでいた。
其れは薄々気付き始め、私は強い人間を演じ始めていた。
貴女はそんな私を見て、抱き締めてくれた。
倖せな日々があった。
温かな気持ちを持てた。
貴女はとても優しくて、柔らかな指先で私の口唇をなぞった。
一人の貴女を必要だと思えた。
貴女も私を必要だと思っていると思っていた。
貴女の光はとても貴い物だった。
愛する喜びを知ってしまった。
愛される喜びを知ってしまった。
愛しくて、恋しくて、何度も泣いた。
片思いの切なさの泪とは違う。
でも、堪え切れなかった。
私は強い人間じゃない。
だからと云って、弱い人間でもなかった。
なのに。
なのに、私はこんなにも弱い。
貴女を愛して、私は弱くなってしまった。
貴女と居れば倖せだった日々。
其れが、姿を変えていた。
貴女が居ないと耐えられない日々。
そんな日々が来るなんて、思いも寄らなかった。
でも、貴女は居ない。
居なくなった。
居なくなってしまった。
貴女と出逢う前の日々に戻っただけ。
だけど、私の心に付いた傷は瘡蓋にはならず、膿んでいた。
血が止まっても、傷は無くならない。
泪の雫が傷口に沁みる。
まるで自分の躰の一部を失った様だった。
私の躰に流れる、貴女と同じ血液を恨む。
貴女を忘れられないから。
遺伝子が、細胞が、貴女を覚えているから。
抱き締められる温もりを。
安らぎをくれる聲を。
瞼を閉じれば、貴女の姿が焼き付いて離れない。
貴女に抱き締められなければ。
貴女に口付けられなければ。
貴女に抱かれなければ。
貴女に愛されなければ。
私は貴女を忘れる事が出来た?
・・・違う。
貴女と出逢わなければ・・・
私達は姉妹だから、出逢ってしまった。
きっと、そうでなければ出逢わなかった。
愛する事も無かった。
でも。
家族なのに。
同性なのに。
其れでも私は貴女を愛してしまった。
姉妹だから?
同性だから?
だから、惹かれた?
私は・・・
私は、違う。
初めて愛した貴女。
永遠に愛している貴女。
私は同性愛者じゃない。
貴女が貴女だから、愛したんだ。
愛せたんだ。
躰が疼くのも、渇きを訴えるのも。
貴女が貴女であるから。
貴女が貴女でなければ・・・
きっと、私は・・・



FIN.


     
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