2003/08/04 |
EDEN |
朝起きて、シャワーを浴びようとして止めた。 どうせ汗をかいているんだ。 ジョギングをしてこよう。 そして、其の後にシャワーを浴びよう。 一旦部屋に戻り、ショーツの上にスパッツを穿く。 一応、帰ってきて直ぐに浴びれるように、脱衣所に行ってバスタオルを用意する。 ついでにスポーツタオルも取り出して、肩に掛けた。 冷たい水で眠い顔を洗い、眠気を吹き飛ばす。 水道の蛇口を捻って止めてから、十秒ほど顔を拭かずに排水溝を見つめていた。 やがて水が全て流れ、鼻の先から一定の間隔で垂れる水滴の感覚が無くなる。 そしてやっと顔を拭いた。 鏡を見ながら少しカールを描くように跳ねた寝癖を直す。 牛乳を飲み、歯を磨く。 いつものように起きてからの習慣をこなす。 そして、いつものように走り出す。 家から出れば日差しが眩しく感じる。 今日も良い天気だ。 ジョギング日和、か。 曇りの日も走るっているけれども。 でも、雨の日は走らない。 約束したから。 姉妹での約束で、二人だけの約束。 五分も走れば、公園に着いた。 並木道を駆け、噴水を横目に曲がり、階段を駆け上がる。 急に風が吹いた。 熱くなった躰には、其れはとても涼しく感じた。 風邪をひかないようにと、首周りだけでもタオルで拭く。 本当は全身拭いた方が良いのかもしれないけれど。 でも。 今は、止まりたくなかった。 怖かった。 寒さに留まってしまう事。 震えるような孤独。 夢の中では一緒にいられたのに。 いつまでも一緒に、毎朝走り続けられると思っていたのに。 いつも走っている公園。 あの日から通らなくなった学校。 ただ。 真似をしても、変わらないようにしても。 ただ、一つ。 絶対に埋められない違和感。 孤独感。 衛・・・ 私の妹。 君がいない。 それでも、私は走る。 何処かに衛の影を求めて。 FIN |
【あとがき】人は自分と似た者に惹かれる。ならば、引かれた者に似ようと思う者も、居ない筈が無い。 |
2003/04/19 |
S-CONSCIOUS |
全てが狂ッテ見えた時。 本当に狂ッテいるのは自分自身。 だって私は自分の命よりも貴女が欲しい。 壊れ壊れてイク理性と支配。 救いが欲しイ? 私にとっての救いとは、何? そうジャナい。 欲しいのは貴女 首を捻じ曲げて、私の方を向かせたい。 瞼を剥がし、瞬きスラ出来なイように。 そうだ、イッそ首ヲ切り落とウか。 部屋の机上に置いて、ずっと私の事を見てイテ貰おうか。 其レトも眼球を刳り貫いてペンダントにしヨウカ。 デモ其れだと、 貴女を貴女とシテ見て良イのは私だけ。 眼球の水晶体はとテも綺麗。 普通なら外かラ見エなイ物だから、皆貴女だって分からなイ。 ほら、コンナニも私は貴方を愛しているから。 こんな世界を捨てて、二人で逃げよう。 【誰カ】が【誰か】でハナく、【貴女>だケニ、『私」ダけニなるようニ。 そういたしましょう。 今 電話を切っても、手首は切らないで。 今はマダ死ナナイで。 貴女が私に 手首を切る事を認めルワ。 今日ハテトモイイオ天気ネ。 月ガ綺麗ヨ。 NEVER END... |
【あとがき】出口である希望が無いと分かっても愛情が止まらない時、溜まり過ぎた愛情に人間は壊れる。 |
2002/10/26 |
追憶の情景 |
確かに其処に居た。 居た筈だった。 だが、気付けば此処に居た。 此処は其処だった。 そうである筈なのに、違う。 まさか自分は・・・・・・時を・・・? 目覚めた時、見慣れた二人の人間を見た。 だが、其れは見慣れた其れと同じであって、異なった。 彼女は自分が目を開けたのを見ると、もう一人の少女に駆け寄って服の裾を引っ張った。 彼女達の名前は? ・・・ああ、良かった。 憶えている。 だがあの後、一体如何なったのかを全く憶えていない。 分かっているのは、自分が死んでいない事。 そして彼女達の名前。 自分は生きている。 だが・・・彼女は・・・? 湧き上がる疑問。 私は部屋を見渡し、探した。 何よりも大切な彼女を。 ・・・・・・・・・ 分かっていた。 居る筈が無いのだ、と。 もう此処は彼女の居る時とは違うのだと。 「おかえりなさい」 不意に聴こえた聲。 一瞬。 そう、一瞬だけ。 彼女の聲であって欲しいと願った。 しかし次の瞬間には自分を恥じた。 聲を発してくれた瞳の前の少女を否定する意味になってしまう事に気付いたから。 彼女等と話をしたい。 そう思った私は、思い付いた事を口にしていた。 ・・・自分は一体、どのくらい眠っていたのだろうか。 「もうすぐ・・・いえ、今日でちょうど一年でしたの」 確信。 そして同時に、違和感を感じた。 何故二人の少女は、自分に対して一人の言葉しか向けないのだろうか? 聲を発さないのだろうか? 疑問が顔に出たか。 少女達は顔を悲しそうに顰めた。 其れ以上の詮索が自分に出来ようか。 更に云うならば、自分にとって優先すべき事実があった。 先程確信した事実。 自分が時を飛んでしまった事。 受け入れるのに時間は掛からなかった。 時間を飛ぶ前の事の方が相当衝撃的だった。 ただ、今其れは記憶以外、此処には無いのだと云う事が、事実を受け入れる事への唯一の救いだった。 ・・・そうだ。 自分は今此処に居る。 あの時には戻れない。 別れを消せない。 あの、最後の別れを・・・ ・・・ならば。 自分は此処に居続けよう。 此の娘達の為にも。 生きる意味を再び見つける為にも。 「ただいま・・・・・・白雪ちゃん、亞里亞ちゃん・・・」 そう云うと、二人は微笑んだ。 まるで泣きそうな表情で。 同時にあの時の彼女の笑顔を思い出した。 もう居ない彼女の・・・ もう逢えない彼女の・・・ この泪は貴女だけに捧げる。 私は彼女達へと、手を伸ばした。 FIN |
【あとがき】始まりか終わりか、此れは終わりへの途中経過。 |
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