2003/03/06 |
卒業まで、あと少し |
愛なのは分かっていた。 だがまさか、普通ならば異性に向ける愛だとは思っていなかった。 気付いたのはあの娘が・・・花穂ちゃんがチアデビューした時。 名簿に花穂ちゃんの名前が載っている事を知った時ではなく、其れを目にした時でもなく。 私が花穂ちゃんに彼女のチアデビューを告げた時。 今まで後輩がチアデビューした時とは比べ様の無いほどの嬉しさを感じた。 同時に自分自身に誇りを感じられた。 其の時、其の瞬間。 私は花穂ちゃんへの恋を自覚した。 勿論、何故だろうと考えた。 何度も、何時間も、何日も。 私は彼女の姉、咲耶さんに訊ねた事があった。 オンナノコを好きになるのは如何云う事なのか、と。 彼女が妹さんを好きなのは知っていた。 だが、あまりに少な過ぎる問いに、彼女は如何思っただろうか。 意味は伝わったのだろうか。 自分を馬鹿にされたと思ったかもしれない。 私が同性を好きになった事に気付いたかもしれない。 怒るだろうか。 笑うだろうか。 どちらでもせめて、答えだけはほしい。 そう思い、不安になる私に、彼女は表情一つ変えずに云った。 手を取って導いてあげる事よ。 ・・・全てを見透かされていた。 私が誰を好きになったのか。 彼女は其処まで分かっていたのだろう。 そう云えば、咲耶さんは時々チアの練習を見に来てたわね。 花穂ちゃんに怒ってばかりの私の怒りを、彼女は理解していたのだろう。 如何して怒るかを。 躓いても転んでも手を差し伸べなかったかを。 咲耶さんと私は何処かが似ていたのかもしれない。 其れ故、決して仲良くなる事はなかった。 其れ故、離れたいとも思わなかった。 ただ、確かに云える、彼女と私の差。 愛を受け入れるか、否か。 愛しているから、愛されたい。 そうなるようにしたい。 ・・・其れが咲耶さんの考えだった。 決して伝えてはいけない。 愛されてはいけない。 其れは禁じられた事なのだから。 ・・・其れが、私の考えだった。 今も変えるつもりはない。 このまま別れに向かう事は寂しく悲しいが、怖くはない。 私は咲耶さんの云った言葉を今も覚えている。 そして、行っていくつもりだ。 其れなら悔いは残らない。 花穂ちゃんが自分でチアの道を選んだのならば、其処を導いてあげよう。 転んだら自分の力で立ち上がりなさい。 其の代わり、私は其処で待っていてあげるから。 其れが私の選んだ道だから。 だから、最後まで見届けるつもりだから。 だから、せめて。 せめて私のようにはならないで・・・ 卒業まで、あと少し。 FIN |
【あとがき】卒業の時期ですね。別れに祈りを。出逢った事にお礼を。 |
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