此処にある小説は【NOVELS DIARY】にて書き残した物。
更に、緋翠が【完全犯罪】を通して伝えたい一つの話の一部分となる物です。





1月24日

HAPPY SWING 【春歌×鞠絵】



過去が現在再度訪れると云うのなら、そんな事実を私は要らない。



・・・憶えていますか?

ずっと離れていたときの事。

ずっと一緒に居られなかったときの事

当たり前が当たり前で無くなったあの冬の日。

貴女は憶えていますか?

『愛している』と繰り返した嘘の言葉。

其れが嘘から本当の気持ちへ変わった日。

動き出した愛情。

止まらない欲望。

全てが始まった日々。

其れが美しいモノかはしりません。

他の誰にとっても平凡で何の事も無いかもしれません。

でも、私には其れがとても美しいモノに見えたのです。

『当たり前』の日々ではいられなくなり、楽しい日々がとても平凡で嫌になりました。

私は一人、呟く。

『愛しています』

其れは構築している物全てが安物の愛に塗れていました。

行動も、言葉も、心も全て。

ただ、守ってほしい。

其れが最高の望みであり、幸福でした。

でも其れは貴女が居なければ遂げられない『妄想』。

やがて、私は其の気持ちを貴女に向かって告げました。

私の中の、本当の愛を。

そして、夢を。

貴女は応えてくれました。

私の求めていた最高の答えで、応えてくれました。

其の瞬間に『妄想の事実』は『真実』となりました。

『真実』はもっと、私の中の欲望を深めました。

また・・・『普通』ではなくなっていく。

もう『普通』ではいられない。

過去の『普通』ではいられない。

『現在』でも、物足りない。

私は・・・『望み』が欲しい。

私は天使達の言葉よりも、貴女を信じます。



私の前に待っている。

欲望達の踊るワルツ。

永久に終わらない千一夜物語を、この両手に。





1月22日

What I want 【可憐×咲耶】



ああ、今夜もあの娘の所に行くんだね。

気紛れな貴女の心を繋ぎ止めるつもりは無いけれど・・・

繋ぎ止めて欲しい。

私を、貴女の心に。

私の口にする『言葉』には愛情が募っていく。

貴女の口にする『言葉』は空っぽの、上辺だけの物に変わっていく。

信じていた愛情は罅割れた言葉から流れ出し、あの娘の元へ向かう。

あの娘の倖せが羨ましい。

自分と立場を摩り替えてしまいたい。

其れをすれば、貴女は愛してくれるのだろうか?

昔、貴女は云った。

『貴女は貴女らしく、精一杯生きていれば良いと思うわ』

私はハッとした。

私にとって、やってはいけない事。

其れは『今の自分では無くなる事』

やってしまったら、もう其処には何も残らないだろう。

けど・・・

『今の私』を貴女は愛してくれていない。

『今の貴女』が愛しているのは『今のあの娘』

『今の私』が『今』にあればあるほど、『今』は『過去』へと変わっていってしまう。

如何すれば・・・如何すれば良いの?

離れていってしまう。

貴女が遠くへ行ってしまう。

貴女が恋しい。

胸が苦しい。

『好きだ』と云われたい。

『愛している』と云って欲しい。

愛が欲しい。

愛が欲しい。

愛が欲しい。



私ハ如何スレバ良イノ・・・?





貴女は知らない。

貴女は自分が何を知らないのかを知らない

そして、何故知らないのかを知らない。

貴女の知らない事。

其れは『自分らしくいる事』が『変わらない事』では無いと云う事。





1月19日

Platonic Love 【千影×衛】



今宵は・・・満月か・・・

こんな夜は血が騒ぎ蠢く。

君を手に入れろと、君を壊せと、躰の奥から囁き掛ける。

君は誰を愛している?

おそらく私ではなく、そして私の中で最も尊敬する者。

そうか・・・彼女か・・・

私は君を、最も興味のある君を手に入れたい。

だが、君は望んでいるか?

彼女は望むか?

・・・いや、違う。

人間が有する人形は一つで充分だ。

君には彼女が、彼女には君が、最もお気に入りの人形として存在するのだろう。

私は既に人形を有している。

其れは古く、脆く、儚く、曖昧で不完全な人形。

私の中だけに存在し、消して消せない存在。

しかし、私は其れを否定している。

・・・違うな。

其れから、逃げている。

私は常に完全なる者を求めている。

其れでも、私の中の私が古い人形を求めていたとしても、私は求めていない。

其れは、最も尊敬している彼女でもない。

求めているのは君だ。

未熟な躰、不安定な精神、下らない理性、其れを押し潰す劣等感。

そして、誰にでも降り注ぐ事が可能な愛情。

君は不完全であり、完全だ。

私の求めている者であり、必要ではない者。

人間の全てはその者の見た物、聞いた物、感じた物だ。

絶対矛盾の世界であろうと、其の者が肯定するのならば当然な世界となる。

逆に、完全な物であろうと、完全を拒む者からは拒絶の対象である。

私が求める者は、不完全な物。

君は完全なる失敗作だ。

さあ、手を取るんだ。

甘美な世界で、一生と永遠の差を見せてあげよう。



幾ら純粋で透き通った物も、積み重なればやがて濁る。

完全なる透明など無い。

完全な物など存在しない。

存在してはいけない。

純粋すぎる其れは、多くの物を手に入れられるだろう。

しかし、逆に其の他の全ての物に破滅を導くだろう。

此の世に生を受けたのと同時に死が待っているのと同様に。





1月9日

透明なマニキュア 【可憐×咲耶】



愛は此処にある。

貴女は其処にいる。

たった一つ、足りないモノ・・・

私は今何処にいるの・・・?



「ゴメンね」の一言で待ち合わせに遅れた事を微笑って許してくれた貴女。

その時の「フフッ」って笑う貴女が綺麗だから、真似してみる。

其れは本当の私では無いけど。

私の色は何処にあるの?

・・・なんて、誰も知らないよね。

貴女のマニキュアの色を真似して塗って、また貴女に逢いたい。

今日こそは自分の色が見つかるかな、って期待して。

そして、今日もまた肩を落とす。

貴女の色がどんどん綺麗に見えてきて、自分の色なんて如何でも良いって思うときもある。

貴女の色を真似する事すら不可能になっていく。

だから、また透明なマニキュアを塗る。

塗っても、ちゃんと綺麗に塗れているか良く分からなくて、曖昧で。

何度も重ねて塗ってみる。

それでも、色は見えない。

ずっと透明。

ずっと不完全。

溜息を吐いて、貴女のマニキュアの色を其の上からまた塗る。

そして、マニキュアを乾かしながら、また思う。

私は何処にあるの・・・



何時気付く?

透明で何の曇りも無い其れが貴女の本当の色である事に・・・





1月8日

君を壊したい 【千影×四葉】



君に触れていたい、壊れるまで。

君を抱き締めたい、壊れるまで。

君を愛したい、壊れるまで。

君は人間が一人も足を踏み入れた事の無い森の奥の湖のように純粋で、汚れが無い。

だから、君の純粋さは私の傷に痛く染みて、抉っていく。

そして同時に、私は癒されている。

私の心を洗っていく君を壊したい。

水に波紋を起こして、君の清らかさを壊したい。

人形のようになるまで、壊し尽くして・・・

そして、私のモノにしたい。

そうすれば、私は彼女を愛せるだろう。

彼女は私を愛する事は無いだろう。

・・・私は周囲に笑顔を振り撒く君が嫌いだ。

君を独占したいんだ。

鎖に繋いで、全身を棘で雁字搦めにしてしまいたい。

其の二つの目を塞いで、全てを見えないようにしてしまいたい。

口を縫い合わせて、喋れなくさせたい。

記憶を消し去り、私以外の事を全て忘れさせてやりたい。

二度と笑顔を他の者に見せないように、君を壊したい。

望んでいる事は、全て何時でも可能な事だ。

しかし、実行しない。

実行は出来ない。

私は君の笑顔も好きなんだ。

他の者に向けられないようにしても、私にすら向けてくれなくなったら、意味が無い。

君の全てを受け入れる事は、私には重すぎる。

そんな勇気、私には無い。

そんな勇気など、私には要らない。

でも・・・十二分の一の笑顔では満足出来ない。

アイが足りない・・・



―――――壊れているのは何方だろう・・・?





1月7日

恋は天然 【白雪×亞里亞】



「今夜は満月ですのね・・・」

白雪はキッチンにある換気用の小さな窓から外の月を見て、呟いた。

視線は向いていなくても、左手はフライパンを動かし、右手は隣のスープを掻き混ぜていた。

「お月様・・・綺麗・・・」

「うえぇぇっ!?」

自分以外誰も居なかった筈なのに、すぐ横から突然聞こえてきた聲に、白雪は飛び跳ねた。

流石に驚いた白雪はフライパンとおたまを落とし掛けた。

「あ、亞里亞ちゃん・・・ι」

白雪が名前を呼ぶと、亞里亞は月から視線を外し、白雪の顔を見て微笑んだ。

亞里亞の笑顔があまりに可愛くて、白雪は思わず見惚れてしまった。

「お月様・・・綺麗ですね・・・」

ほへぇ〜、と云うか、ぽわ〜ん、と云うか・・・キャー!何方にしろ可愛いんですの!

亞里亞が話し掛けるのを他所に、白雪はそんな感じで悶えていた。

「白雪ちゃん?」

亞里亞が心配そうな顔をした。

白雪は、この娘に心配される程に姫はおかしかったのかしらι、とちょっと反省した。

今度から周りには常に注意を払わないと!

そう誓いながら、白雪は右手の拳をギュッと握った。

すると、エプロンの裾がクイクイッと遠慮気味に引っ張られた。

「白雪ちゃん・・・如何したの?」

「・・・え?あ・・・ひ、姫も月が綺麗だなぁ・・・って、そう思ってましたの」

白雪がそう云うと、亞里亞はまた微笑った。

「白雪ちゃんと・・・・・・一緒・・・」

亞里亞は一人で照れている。

「キャー!可愛い!姫、亞里亞ちゃんの事、大好きですの!!」

白雪が突然そう云うと、亞里亞は何だか良く分からないと云うように驚いていた。

そして、一瞬の間を置いて、顔を真っ赤にさせた。

白雪は小さくガッツポーズをしてから、亞里亞の頬を両手で包んだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ」

少し俯いて照れていた亞里亞が小さく聲を漏らした。

「変な匂い・・・」

「え!?」

白雪は自分の服の匂いを嗅いだ。

何時もと同じ・・・?

もしかして、姫は何時も臭いって思われてる!?

白雪は亞里亞が何も云う前から、勝手にどんどん落ち込んでいっている。

「違うの・・・後ろ・・・」

「後ろ!?姫の服の後ろですの!?」

白雪は背中の匂いを嗅ごうと頑張ってみた。

・・・無理だった。

「ううん・・・そうじゃなくて・・・・・・あれ・・・」

亞里亞は白雪の後ろのフライパンを指差した。

「なんだ・・・姫じゃ無かったんですのね・・・・・・って、あれ!?」

白雪は急いでフライパンの中を覗いた。

其処には、黒い塊が無数にあった。

確かに・・・焦げ臭かった・・・ような・・・気が・・・しなくも・・・無いでしたわね・・・ι

「はぁ・・・」

白雪は深く溜息を吐いた。

コンロの火を消してしゃがみ込んだ白雪に、亞里亞は近付いて自分もしゃがんだ。

そして、白雪を抱き締めた。

亞里亞の頬が白雪の頬に当たる。

「え?えっ!?あ、亞里亞ちゃん!?」

柔らかい亞里亞の躰の感触に、今度は白雪が顔を真っ赤にさせた。

「白雪ちゃん・・・・・・ドンマイ」

多分、花穂の物真似だろう。

亞里亞はそう云うと、ギュッとほんの少しだけ抱きしめる力を強めた。

亞里亞の細い腕では、それでも全然力は強くなかった。

だから尚更、白雪は優しく抱き締められている感じがして、嬉しかった。

亞里亞ちゃんにギュッてして貰えるんだったら、これからも少しくらいお料理失敗しちゃっても良いかな?

白雪は、そんな事を思った。





1月6日

What are you waiting for? 【鈴凛】



あの時感じていた時間を置き忘れて来た。

今の私は、まさにそんな感覚だった。

確かにアメリカは楽しい。

機械の回路の勉強なんかも詳しく教わる事が出来る。

でも、友達と話しているとふと・・・思い出す。

あの頃の事。

此の国に来るのは、小さい頃からの夢だった。

でも、いざ皆と離れ離れになると、泪が出た。

当たり前の日々、当たり前の会話、当たり前の生活。

でも、こっちに来てから、当たり前が当たり前じゃ無くなった。

導火線が切れた。

だから、自分で他の導火線を選んだ。

そんな感じだ。

道を失った訳では無いが、元の道に戻る事も出来ない。

私が卒業して帰ったら、みんな変わっちゃってるかな?

多分、変わらないよね。

本当に小さい時から全員が全員、変わって無いから・・・

・・・なんて、そんな訳無いんだよね。

皆が昔から変わらないように見えたのは、あまりに近くに居過ぎたから。

離れていたらどれだけ変わっちゃうんだろう・・・

私の事、忘れちゃってたりして・・・

冗談混じりにそう思った。

でも、其の直後に不安になった。

私は、その不安を掻き消す為にベッドに横になり、眠った。



・・・珍しく夢を見た。

とても・・・嫌な夢。

日本に帰った私に、皆が口を揃えてこう云う。

「貴女、誰ですか?」

皆は冗談で云ってるのかなって思った。

「鈴凛だよ」

って少し笑いながら教えてあげると、皆は・・・

「鈴凛ちゃんは此の娘だよ」

・・・それで、皆はメカ鈴凛を指差す。

「貴女の居場所は無いんだよ」

・・・メカ鈴凛は笑顔のまま、そう云い放った。

そして、皆は楽しそうに色々な事を話し始めた。

洋服の事とか、明日の予定とか。

私は皆の目に映って居なかった。

十二人で楽しそうに微笑っている。

メカ鈴凛を合わせて、十二人で・・・

メカ鈴凛が居る場所は、私の場所なのに・・・

私の居た場所なのに・・・

嫌だ・・・嫌だよ・・・

最後にメカ鈴凛は、憐れそうに私を見下げて・・・こう云った。

「貴女なんて、もう誰も必要としてないよ」

其処で私は目を覚ました。

いや・・・目を覚まさざるを得なかった。

背中が汗だくになっていて、気持ち悪い。

泪が溢れ、枕が濡れていた。

私は、聲を隠そうともせずに泣いた。

『誰も必要としてないよ』

自分と同じ聲をしたメカ鈴凛の言葉が、頭の中で何度も反響した。





12月22日

REVERSE MOON†REVERSE MAGICIAN
【鈴凛×四葉】



私って・・・皆の為に何が出来たかな・・・

皆大切な姉妹だけど・・・

四葉ちゃん・・・

あの娘は他の子達とは違って・・・

・・・・・・アレ?

なんだったっけ?

・・・私の姉妹・・・だよね。

そうじゃなくて・・・えっと・・・

好きな人・・・?

・・・そうだね。

そうだよ。

私は四葉ちゃんが好きだったんだ。

ううん、好きなんだ。

アハハ・・・気が付かなかったな・・・

四葉ちゃんが千影ちゃんと一緒にいると楽しそうだから、それで倖せだった。

だから、後ろからそっと四葉ちゃんの背中を押してあげた。

二人がくっ付くように、手伝ってあげていた。

何でだろう?

胸が痛くなるのに気が付いてなかったわけじゃないのに・・・

この気持ちに気付いてなかったなんて・・・

それと・・・メカ鈴凛。

あの娘はちゃんと四葉ちゃんの事、見ていてくれるかな?

それはちょっと心配。

それよりももっと心配なのが・・・

だけど、あの娘に四葉ちゃんを取られないかな・・・

千影ちゃんが居るからあの娘じゃ取れないと思うけど。

アハハ・・・ハハッ・・・

何で・・・もっと日本に残っていたいって考えちゃうんだろう・・・

アメリカに留学しに行くのが私の夢だったはずなのに・・・

何でこんなに悲しいんだろう?

もっと前に・・・

私がアメリカに留学したいって思う前に、四葉ちゃんが現れていたら・・・

こんな思い、しなかったかもしれない・・・

如何してもっと早く出逢えなかったんだろう・・・

もっと・・・もっと・・・

・・・私は・・・・・・

何が悲しいんだろう?

四葉ちゃんを取られてしまうかもしれない事?

・・・ううん、違う。

四葉ちゃんに逢えない事。

四葉ちゃんの顔を見れない事。

・・・うん、分かったよ。

夢は諦められないけど、早く叶えれば・・・いっぱい勉強して、早く卒業して・・・

直ぐにあの家に戻る。

あの娘に逢いたい。

四葉ちゃんが千影ちゃんと倖せに暮らしていても良い。

四葉ちゃんの倖せな顔を見たい。

私は其れだけで良い。

あの娘の倖せが私の倖せだから・・・





12月16日

REVERSE DEATH†REVERSE FORTUNE
【亞里亞×千影】



『天使様が来た・・・』

其の人が私の瞳に映った時、そう思った。

理由なんて求めなかった。

だから、別に絵本で見たような、真っ白な羽根が生えていた訳では無い。

それでも、思った。

倖せを運びに来てくれた。

そう思った。

私の思った事は現実だった。

其の人に付いて行って辿り着いた其処は、望んでいたモノが全て存在した。

十一人もの姉妹に囲まれて、孤独から掛け離れた倖せを感じた。

お屋敷では望む物は全て手に入った。

それでも、本当に求めていたモノは無かった。

だから、其処は私にとって楽園だった。

そして其れはずっと続くと信じていた。

でも・・・

『さようなら・・・可愛い妹達』

そう云って彼女は私達に背を向けた。

其の背中には・・・羽根があった。

世界中の光を全て吸い込むような、漆黒の羽根。

思い浮かんだ其れは記憶の中の其れとは違う。

なのに、やはり『天使』と云う言葉が思い浮かんだ。

やっぱり・・・貴女はそうだったんだね?

『ありがとう・・・・・・さようなら・・・』

私はそう云った。

彼女は背を向けたままだったが、微笑んでいた。

顔は見えないのに、何故だか分かった。

だから私も、笑顔だった。

ありがとう、天使様・・・

次の瞬間、彼女の姿はもう其処には無かった。

その代わりに、十枚の漆黒の羽根が散った。

其の内の一枚が私の頭上へと降りてきた。

手で受け止めようとすると、其れは手に触れる直前で止まった。

そして、空気に溶けるように・・・・・・消えていった。

其の時はもう、私は其の人が存在して居た事さえ憶えて居なかった。





12月15日

REVERSE TOWER†REVERSE JUDGMENT
 【千影×鞠絵】



アレは・・・何時の事だったかな・・・

そう、彼女と初めて今生で逢った時の事。

『君を・・・・・・迎えに来たよ・・・』

私がそう云った時、彼女は明らかに驚いていた。

『其れは・・・違います。私が皆さんに逢いに来たんですよ?』

彼女は憶えていなかった。

何度も私と出会っていると云う事、そう、前世で・・・

何度繰り返しても、私はこの季節に彼女と出会っていた。

そして、悲しい事に何時も私達の別れは死だった・・・

月が三度姿を消しては現れたその夜。

『・・・私、もしかしたら昔に貴女と逢った事があるような気がします・・・』

ああ、忘れていたよ。

君は何時も最初は思い出せないでいたんだったね・・・

それでも、彼女は私と日々を過ごしていくと少しずつ、砂時計の砂が堕ちていく時のようにゆっくりと・・・

そして・・・砂時計が全て時を刻んだ時、運命は繰り返される。

そう、今生でもそうだった。

全て知っていたのに・・・避ける事が出来なかった・・・

彼女は運命を受け入れる時は微笑っていた。

何時もそうだった。

ずっとずっと・・・前世から・・・

決まっていた事だった・・・

私は手の甲を噛み千切った。

赫い液体が露わになった肉から滲み出てくる。

口に残った肉片を其の場に吐き捨てる。

手首を其の液体が伝う。

此れが・・・此れさえなければ・・・・・・こんな運命なんか・・・止められたのに・・・

そして黒い薔薇の花束を目の前の墓石に添え、私は其処から立ち去った。

自らの運命を受け入れる為に・・・





12月13日

REVERSE CHARIOT†REVERSE SUN
 【咲耶×衛】



前を見れば、貴女が居る。

階段の上でボクの事を手招きして呼んでいる。

ボクは階段を駆け上がる。

すると、貴女はボクが登った段数だけ階段を上る。

そしてまた、手招きをする。

ボクは置いて行かれないように貴女を追いかける。

ボクが疲れて休んでしまうと、貴女は其の度に立ち止まって振り返る。

「置いて行っちゃうわよ」とか「だらしないわね」とか、そんな事を云いながらも待っててくれる。

貴女が何時も見守ってくれて、勇気をくれた。

貴女の居ない日々なんて考えた事は一度も無かった。

考えたくも無かった。

ボクは貴女が居るから今のボクで有り続けられる。

貴女がボクの階段へ招いてくれたから、今のボクが有る。

ボクが目指しているのは、ボクの階段の上に待って居るモノじゃなくて、貴女なんだ。

貴女がボクの目標。

ほら・・・今日も其処(貴女)まで登ろう。

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