1月18日

走りぬける君へ、Hurry up! 【白雪×雛子×亞里亞】



姫の小さい頃の夢ってなんだったっけ?

やっぱり『お嫁さん!』とか思ってたのかな?

今の姫は何方かと云うと『お母さん』っぽいような気がするんですの。

そんな事を考えながら、姫はお庭で亞里亞ちゃんと雛子ちゃんが遊んでいるのを見守っていました。

蟻の巣から蟻が出てくるのをジッと見つめるのが遊びなのかは良く分からないけど。

雛子ちゃんは亞里亞ちゃんに楽しそうに話し掛けてるし、亞里亞ちゃんも嬉しそう。

で、姫は二人の為に作って置いたクッキーでも持ってきてあげようかな〜って、キッチンに行ったんですの。

「あ、あれ?鈴凛ちゃん?」

「え?あっ、あのっ、そのっ!お、お邪魔しちゃったね、アハハッ・・・」

キッチンには何故か鈴凛ちゃんが居て、姫の姿を見ると焦った様子で出ていっちゃいました。

多分、テーブルの上に置いてあったクッキーを盗み食いしようとしてたんですのね?

後でもう一度作って鈴凛ちゃんにもちゃんとした形であげるからね。

姫は亞里亞ちゃん達のところに戻りながら、クッキーの枚数を数えてみました。

やっぱり、二枚足らない。

でも、二枚なら亞里亞ちゃんと雛子ちゃんにあげる数はピッタリのままだから良いよね。

なんて、少し楽しいような嬉しい気分になりながら、思ってました。

姫がお庭に戻ると、なんと、亞里亞ちゃんが泣いていたんですの!

其の横では、雛子ちゃんが困りながら其れを泣き止ませようとしていました。

「あ、亞里亞ちゃん!どどど、如何したんですの?怪我?それとも、何処か痛いんですの!?」

姫が訊くと、亞里亞ちゃんは小さく横に首を振りました。

「亞里亞ちゃん、白雪ちゃん何処?って泣き出しちゃったの・・・」

雛子ちゃんが、泣いたまま答えない亞里亞ちゃんの代わりに答えました。

「え?亞里亞ちゃん、姫は此処にちゃんと居ますよ」

姫は、俯いていた亞里亞ちゃんを自分の方へ向かせた。

亞里亞ちゃんは姫の顔を見ると、一瞬泪を止めたけど、また泣き出してしまった。

ど、如何すれば泣き止んでくれるんですの?

姫の方が泣きたくなってきちゃいましたの。

・・・あ、そうだ!

「亞里亞ちゃん、お口アーンってしてください」

姫がそう云うと、亞里亞ちゃんは少し遅れて、素直にお口をアーンってしてくれましたの。

「はい、アーン」

「あーん・・・」

亞里亞ちゃんのお口は小さくて、可愛くて。

姫は其処に、一番小さかったクッキーを入れてあげました。

亞里亞ちゃんはクッキーをゆっくり噛むと、おいしい・・・と嬉しそうに微笑った。

「ワーイッ!亞里亞ちゃんが笑ったのー!」

ウフフッ、雛子ちゃんも嬉しそうですの。

「はい、雛子ちゃんも、アーン」

「アーン」

クッキーが半分くらい口の中に入ると、雛子ちゃんはパクッと口を閉じて、其れを口唇で挟みました。

そして、そのまま姫の方に顔を近づけてきました。

姫は一瞬、其れが如何云う意味なのか分からなかったけど、少し考えて、分かりましたの。

外に残った反対側を姫に食べて欲しい。

そう云う事だって分かりました。

雛子ちゃんったら、おませさんなんだから!

そんな事を思いながら、姫はちょっと恥ずかしかったけど、反対側をパクッと食べちゃいましたの。

雛子ちゃんも姫と同時にクッキーを噛んだから、残った真ん中の方がポトリと地面に落ちちゃった。

「美味しいね、白雪ちゃん」

「え、ええ・・・そうですわね」

ほ、本当に恥ずかしかったですの・・・ι

「雛子ちゃん・・・ずるい・・・」

・・・・・・え?

「亞里亞にも・・・同じ事してください」

えっ、ええぇっ!?

もう、本当に・・・多分今顔真っ赤ですの・・・ι

あぅ・・・だからって、断ったら亞里亞ちゃん泣いちゃうだろうし・・・

「分かりました!はい、あーん」

「あーん」

パクッ。

姫って弱い・・・ι

「あー!亞里亞ちゃんだけ二枚食べるのはずるいよ!」

あ・・・あぁ・・・大体予想してましたけどι

「はい、あーん・・・」

「あーん」

パクッ。

「亞里亞も其の食べ方・・・もう一度したいです・・・」

あ、亞里亞ちゃぁん・・・ι

「はい・・・あーん・・・」

「あーん」

パクッ。

「ヒナも〜♪」

其の後も何回か繰り返しましたι

何度も繰り返していたら、お皿にはクッキーがもう無くなっちゃった。

けど、亞里亞ちゃんがもう一度、ずるい、って云って来たので、姫は本当に困ってしまいましたの。

だから、亞里亞ちゃんのほっぺにチュッてキスしてあげるって事で、解決させたんですの。

結局姫はクッキーを半分食べる事になっちゃって、太らないか心配しながらまたクッキーを作ってました。

今度は、他の姫の姉妹にも食べて貰えるように、沢山作るんですの!

でも、後で嫌でも分かる事になるんですけど・・・

その後も、亞里亞ちゃんと雛子ちゃんが、あーんってして欲しい、って云いだしたんですの!

だから、姫はまた沢山クッキーを食べる事になっちゃって・・・ι

それに、咲耶ちゃんと四葉ちゃんがからかって来るから本当に恥ずかしかったんですの。

でも、嫌だったんじゃないんですのよ?

亞里亞ちゃんも雛子ちゃんも可愛くて、本当は、本当に嬉しかったんですの。

だから、姫は今日もクッキーを焼きます。

何時かちゃんと口唇同士でキス出来るかな〜なんて鼻歌交じりで考えながら。





1月7日

恋は天然 【白雪×亞里亞】



「今夜は満月ですのね・・・」

白雪はキッチンにある換気用の小さな窓から外の月を見て、呟いた。

視線は向いていなくても、左手はフライパンを動かし、右手は隣のスープを掻き混ぜていた。

「お月様・・・綺麗・・・」

「うえぇぇっ!?」

自分以外誰も居なかった筈なのに、すぐ横から突然聞こえてきた聲に、白雪は飛び跳ねた。

流石に驚いた白雪はフライパンとおたまを落とし掛けた。

「あ、亞里亞ちゃん・・・ι」

白雪が名前を呼ぶと、亞里亞は月から視線を外し、白雪の顔を見て微笑んだ。

亞里亞の笑顔があまりに可愛くて、白雪は思わず見惚れてしまった。

「お月様・・・綺麗ですね・・・」

ほへぇ〜、と云うか、ぽわ〜ん、と云うか・・・キャー!何方にしろ可愛いんですの!

亞里亞が話し掛けるのを他所に、白雪はそんな感じで悶えていた。

「白雪ちゃん?」

亞里亞が心配そうな顔をした。

白雪は、この娘に心配される程に姫はおかしかったのかしらι、とちょっと反省した。

今度から周りには常に注意を払わないと!

そう誓いながら、白雪は右手の拳をギュッと握った。

すると、エプロンの裾がクイクイッと遠慮気味に引っ張られた。

「白雪ちゃん・・・如何したの?」

「・・・え?あ・・・ひ、姫も月が綺麗だなぁ・・・って、そう思ってましたの」

白雪がそう云うと、亞里亞はまた微笑った。

「白雪ちゃんと・・・・・・一緒・・・」

亞里亞は一人で照れている。

「キャー!可愛い!姫、亞里亞ちゃんの事、大好きですの!!」

白雪が突然そう云うと、亞里亞は何だか良く分からないと云うように驚いていた。

そして、一瞬の間を置いて、顔を真っ赤にさせた。

白雪は小さくガッツポーズをしてから、亞里亞の頬を両手で包んだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ」

少し俯いて照れていた亞里亞が小さく聲を漏らした。

「変な匂い・・・」

「え!?」

白雪は自分の服の匂いを嗅いだ。

何時もと同じ・・・?

もしかして、姫は何時も臭いって思われてる!?

白雪は亞里亞が何も云う前から、勝手にどんどん落ち込んでいっている。

「違うの・・・後ろ・・・」

「後ろ!?姫の服の後ろですの!?」

白雪は背中の匂いを嗅ごうと頑張ってみた。

・・・無理だった。

「ううん・・・そうじゃなくて・・・・・・あれ・・・」

亞里亞は白雪の後ろのフライパンを指差した。

「なんだ・・・姫じゃ無かったんですのね・・・・・・って、あれ!?」

白雪は急いでフライパンの中を覗いた。

其処には、黒い塊が無数にあった。

確かに・・・焦げ臭かった・・・ような・・・気が・・・しなくも・・・無いでしたわね・・・ι

「はぁ・・・」

白雪は深く溜息を吐いた。

コンロの火を消してしゃがみ込んだ白雪に、亞里亞は近付いて自分もしゃがんだ。

そして、白雪を抱き締めた。

亞里亞の頬が白雪の頬に当たる。

「え?えっ!?あ、亞里亞ちゃん!?」

柔らかい亞里亞の躰の感触に、今度は白雪が顔を真っ赤にさせた。

「白雪ちゃん・・・・・・ドンマイ」

多分、花穂の物真似だろう。

亞里亞はそう云うと、ギュッとほんの少しだけ抱きしめる力を強めた。

亞里亞の細い腕では、それでも全然力は強くなかった。

だから尚更、白雪は優しく抱き締められている感じがして、嬉しかった。

亞里亞ちゃんにギュッてして貰えるんだったら、これからも少しくらいお料理失敗しちゃっても良いかな?

白雪は、そんな事を思った。

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