1月25日

KISSIN’NOISE 【鈴凛×花穂】



良いな・・・皆、倖せそうで。

私も本当は好きな人が居る。

けど、其の気持ちは既に倖せを二人で分かち合えている人達にとっては、迷惑なんだろうな。

私にも倖せを分けてください・・・なんて、云えるわけない。

私だけ・・・置いてかれちゃったような気がする・・・

「鈴凛ちゃん。花穂、伝えてきたよ」

ああ・・・まだこの娘がいたね。

私と同じ境遇の可哀想な私の妹。

今、目の前で笑っているけれど・・・其れは嘘なんでしょう?

「如何だった?」

私は訊いた。

花穂ちゃんが自分で其の事を認めなければ終わらない。

自ら事実を話さなければ解決しない。

結果も全て分かっていた事だけれど。

其れでも訊いた。

意地悪かもしれない。

残酷かもしれない。

でも、其れが最良だと思ったから訊いた。

花穂ちゃんが其れを望んでいると思ったから訊いた。

「うん・・・きちんと、振られて来たよ」

「・・・・・・そっか」

私は花穂ちゃんの表情から逃げるように顔を伏せた。

哀しそうな、清々しそうな、自嘲気味な・・・失恋の色。

私が恐れている色。

「花穂・・・バカだなぁ・・・・・・全部・・・わ・・・分かってた・・・のに・・・うぇ・・・えぇぇん・・・」

泣かないで・・・泣かないでよ・・・

私も泣きたくなってしまうから・・・貴女へ逃げたくなってしまうから・・・

気付いたら私は、花穂ちゃんを抱き締めていた。

そして、泣いていた。

自分の全てを捨てても、貴女を倖せにしてあげたい。

そう思った。

両腕の中で泣きじゃくる花穂ちゃんを、私は確かに愛していた。

今、この一瞬だけでも、愛していた。

傷を舐め合うだけでも構わない。

同情でも、憐れみでも、偽善でも、自惚れでも構わない。

私は其の瞬間、自尊心を投げ捨てた。

愛の無い貴女へ、この向かう場所を持たない愛を受け取って欲しい。

其れが花穂ちゃん自身の自尊心までも傷つける事になったとしても・・・

私は花穂ちゃんの口唇へ、自分の口唇を重ねた。

愛情から生まれるキスは『普通』だけど、私達に『普通』の恋愛は無い。

『普通』の傷ついた恋心を癒すには『普通』では足りなかった。

キスから生まれる恋愛がいけないなんて・・・誰が決めたの?

全く愛の無いキスよりは・・・幾分か『普通』だと思わない?

求め合うのは一切不純なんかじゃない。

「ごめんね」

「・・・如何して?」

私達は傷付いた分だけキスをした。

でも、未だ足りない。

足りないのは・・・愛情。

「先刻のは・・・何時か必ず忘れて」

「・・・うん」

花穂ちゃんは少し俯いて、ゆっくりと頷いた。

「何時か・・・さ。私も綺麗サッパリあの人に振られるよ」

何だか・・・自分で云ってて可笑しいな。

振られるって分かってるのに、こんなにも心に引っ掛かっているなんて。

「そしたらさ、私は花穂ちゃんの事、素直に好きになれると思うんだ」

私は・・・まだ、衛ちゃんへ・・・四葉ちゃんへ・・・嫉妬している。

私の好きな二人の人に愛されている二人に嫉妬している。

でも・・・そんな嫉妬を早く無くしたい。

私の今の気持ちを綺麗に無くし、花穂ちゃんを私へ完全に振り向かせたい。

「花穂は・・・優しい鈴凛ちゃんが・・・花穂の事受け止めてくれた鈴凛ちゃんが好きだよ」

花穂ちゃん・・・如何して貴女はそんなに優しいの?

私が傷付かないように私を導くの?

「でも未だ・・・違うのよ。もっと時間が必要なの。私達が失って悲しめる位まで育てなきゃ」

そう・・・未だ・・・いえ、古傷は永遠に残るんだよ。

だから其れに愛を積み重ねて生きたい。

古傷を埋めるような愛を自分の中から生み出したい。

「花穂は・・・もう無くしたくないよ」

私は・・・まだ無くしていない。

古傷すらも無い。

傷付く事を待ってるなんて、可笑しいよね。

でも、人の心はそんなに単純じゃないんだ。

最も望んでいる倖せがダメなら、次の倖せを探す。

そんな・・・そんな恋愛でも・・・『人生』でしょ?





12月17日

REVERSE PRIESTESS†REVERSE LOVERS
【千影×花穂】



もっと、抱いて・・・

届かない、呟き。

躰を交わらせれば倖せだと思っていた。

だから、貴女に抱かれた。

貴女は私を受け入れるだろう。

私は貴女を愛している。

貴女も私を愛している。

だから、そう思っていた。

そう信じる事で納得させ、不安にならないように其れを自分へ押し付けた。

貴女は私を抱いた。

快楽に身を任せ、喘ぐ聲すらも隠す事をせずに貴女を感じた。

其の行為の後、最初に感じたのは自らの望み通りになった事への自己満足だった。

次には、貴女が私を抱いたのは愛情では無いと分かっていた事への切なさ。

同情、憐れみ、欲望。

どれかは分からなかった。

それでも、愛情ではなかった事は分かった。

そして、最後に残ったのは不安だった。

手足のもげた人形の山に投げ捨てられる自分。

其れを表情一つ変えずに見下ろす貴女。

貴女が背を向けて去っていく様子をただ見つめるだけの私。

呼び止めたくても、聲が出せなくて、手も動かせなくて・・・

『捨てないで、捨てないで・・・・・・私を・・・置いて行かないで・・・・・・』

私は貴女の傍に居るだけで良い。

骨董品のように飾られるだけでも構わない。

貴女の性欲を満たす人形になっても構わない。

だから・・・塵のようには扱わないで・・・

捨てないで・・・・・・お願い・・・





12月8日

REVERSE MAGICIAN†REVERSE EMPEROR
 【可憐×花穂】



『貴女が好きです』

ずっとしまっていたこの気持ち。

伝えたらあの娘は如何思うのだろう?

私の最も望んでいる答えを返してくれるかな?

あの娘が私の事を嫌いな筈は無い。

そう、絶対に私の希望は叶うはず・・・

『・・・何時まで逃げてるつもりなの?』

・・・全部夢だって思いたかった。

だけど・・・それは全て現実。

目覚めれば消えてしまう、素晴らしい夢とは違う。

重りとなって、自らに重ねられていく現実。

其れから目を逸らしても、其の目は自分の物。

自分が自分でいる事は逃れられない。

自分があの娘を好きだった事実からも逃れられない。

あの娘が私の望む物とは違う気持ちだった事も逃れられない。

自分の気持ちに焦りすぎて目の前の彼女を見ていなかった。

だから、あの娘が去っていくのも見えなかった。

私は自分の未熟さを憎みながら、自分が自分である事に怒りを憶えながら、悲しみを雫にして流した。

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