落ちてはいけない恋に墜ちた。
叶わぬ恋と知りながら、求める為に奪う事を選んだ。
悪魔の誘惑に負け、悪魔になる。
長い道のりの末に辿り着く結末は、無限回廊。
それでも、あの感情にもう一度触れられるのならば…



dears



目を覚ます。
其の表現は果たして私にとって正しい物なのだろうか。
私は夢の中でも、確かに目を覚ましている。
そして其れを知覚している。
私には休み見る夢すらない。
いや、むしろ。
夢と相対する存在、すなわち今であり現実と呼ばれる物。
其れと夢の境界線が消えた私の今は、夢でも現実でも無いのかも知れない。
同時に、夢でも有り得、現実でも有り得る。
私は現実にあり、夢の中に住む者。
知覚する対象は視点を変えるだけで正反対の物となり、其の存在の意味と定義すらを変える。
夢と現実。
どちらも私には変え得る事が出来る世界。
努力しても叶えられない夢はあるかも知れないけれど、努力しないで叶う夢も無い。
ふと、そんな、彼が私に云った言葉を思い出した。
誰よりも愛し、誰よりも殺したいと思っている人。
…そうだ。
私には休みを与えてくれる夢は無い。
だけどたった一つだけ、永い夢を見ている。
夢と夢。
決して触れられない物と、近付き触れ得られる物。
過去に消える物、未来にしか存在出来ない物。
後者のみが、私の夢。
だから、私の夜見る世界は、私の夢ではない。
夢とは、もう一つの世界。
現実で海の向こう側に別の現実があるように、夢もまた別の夢と隣接し、繁がっている。
だが、夢を見ない私は眠りに就いた後、何処とも繁がれていない世界に着く。
すなわち其れは何処とも繋ぐ事の出来る世界。
云い換えれば、私だけの領域。
私は他人の夢に私の領域を繋げ、複数の人間に共用された夢から、一人一人の夢を隔離していく。
領域を盗み出し、夢を喰らい、成り代わる。
其れが私の生きる方法。
悪魔との禁じられた契約を交えたあの瞬間から。
私の夢を叶える為に人間の夢を汚し、犯す。
私に捕らえられた人間は、皆自分の理性と云う名の魔物によって墜ちていく。
快楽を与える事と引き替えの、悪魔に墜ちた私と人間の契約。
罪悪感など感じない。
だからこうして、今宵も私は瞳を閉じる。
今日の人間は私と同い歳か、一つ上か程度の少女。
当たりか、はずれか。
生まれ変わったあの人の夢に辿り着く時まで続く、悪魔との契約。
躰を繋がらせ、責めぎ合い、二人で果てる其の時まで続く、気の遠くなるような旅。
「フフッ……」
私は思わず微笑った。
そして、記憶に焼き付いて離れないあの人物に向けて囁く。
「                 」




Fin.


ノーコメント。
2004/04/03 【最終更新:2004/12/05】

     
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送