1月24日

HAPPY SWING 【春歌×鞠絵】



過去が現在再度訪れると云うのなら、そんな事実を私は要らない。



・・・憶えていますか?

ずっと離れていたときの事。

ずっと一緒に居られなかったときの事

当たり前が当たり前で無くなったあの冬の日。

貴女は憶えていますか?

『愛している』と繰り返した嘘の言葉。

其れが嘘から本当の気持ちへ変わった日。

動き出した愛情。

止まらない欲望。

全てが始まった日々。

其れが美しいモノかはしりません。

他の誰にとっても平凡で何の事も無いかもしれません。

でも、私には其れがとても美しいモノに見えたのです。

『当たり前』の日々ではいられなくなり、楽しい日々がとても平凡で嫌になりました。

私は一人、呟く。

『愛しています』

其れは構築している物全てが安物の愛に塗れていました。

行動も、言葉も、心も全て。

ただ、守ってほしい。

其れが最高の望みであり、幸福でした。

でも其れは貴女が居なければ遂げられない『妄想』。

やがて、私は其の気持ちを貴女に向かって告げました。

私の中の、本当の愛を。

そして、夢を。

貴女は応えてくれました。

私の求めていた最高の答えで、応えてくれました。

其の瞬間に『妄想の事実』は『真実』となりました。

『真実』はもっと、私の中の欲望を深めました。

また・・・『普通』ではなくなっていく。

もう『普通』ではいられない。

過去の『普通』ではいられない。

『現在』でも、物足りない。

私は・・・『望み』が欲しい。

私は天使達の言葉よりも、貴女を信じます。



私の前に待っている。

欲望達の踊るワルツ。

永久に終わらない千一夜物語を、この両手に。





1月20日

Prism Heart 【春歌×鞠絵】



白い壁の部屋にある、白いシーツの敷かれたベッドの中で一人の少女が上半身を起こしていた。

少女は開かれた窓から吹く風に髪を靡かせながら、窓の外の風景を眺め、時折溜息を吐いた。

―――――トントン。

突然、壁の色に合わせられた白いドアが軽く二回ノックされる音がする。

大して力を込めて叩いていなくても、無音の部屋には充分響いた。

「鞠絵ちゃん、入りますね」

ドアの外から声が聞こえ、静かにドアが開かれる。

そこから、蜜柑色のブレザーを纏った少女が、大きな犬の首輪に繋がった紐を握っていた。

頭の後ろで一つに縛った髪は少女の動きに合わせて左右に揺れる。

「ごめんなさい、春歌ちゃん。毎日のようにミカエルの散歩を頼んでしまって・・・」

ベッドの上の鞠絵と呼ばれた少女は、春歌の顔を見れて嬉しそうな、愛犬の散歩を押し付けてしまい申し訳

なさそうな、そんな複雑な表情をした。

「いえ、ワタクシで宜しければ何時でもお引き受けしますわ」

そう云いながら見せた春歌の笑顔に、鞠絵は惹かれている。

他人を守れる力をもっている事に羨ましさを覚えた。

春歌はその場にしゃがみ、ミカエルの首輪を外す。

すると、ミカエルは鞠絵の寝ているベッドのサイドテーブルの前に座り込んで鞠絵の方をジッと見つめる。

鞠絵は上半身を少し動かし、ミカエルの頭を撫でる。

「あ、そうでした。鞠絵ちゃんが欲しがっていた本を買って来ました」

春歌はベッドの横にある椅子に座り、学校の鞄から書店の名前が印刷された紙袋を取り出した。

「はい、どうぞ」

春歌が本の入った紙袋を差し出すと、鞠絵は少し顔を紅潮させた。

「えっ?あ、ありがとうございます。あの・・・本当に良いのでしょうか?」

目の前に差し出された物を暫らく見つめ後、鞠絵は上目遣いに問う。

春歌は一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに笑顔に戻る。

「ええ、もちろんですわ」

其の言葉に、鞠絵は嬉しさに胸の辺りが締め付けられるように感じた。

鞠絵はミカエルの頭から手を離し、紙袋を受け取った。

紙袋の中の本は、春歌にとっては大した重さではなくても、鞠絵の華奢な腕には大分重く感じられた。

この本を鞄の中に入れたままミカエルの散歩をするなど、鞠絵には考えられない事だろう。

鞠絵は本を両手で大事そうに抱え込んだ。

「ありがとうございます・・・」

そして、春歌への感謝の言葉をもう一度呟いた。





12月15日

REVERSE TOWER†REVERSE JUDGMENT 
【千影×鞠絵】



アレは・・・何時の事だったかな・・・

そう、彼女と初めて今生で逢った時の事。

『君を・・・・・・迎えに来たよ・・・』

私がそう云った時、彼女は明らかに驚いていた。

『其れは・・・違います。私が皆さんに逢いに来たんですよ?』

彼女は憶えていなかった。

何度も私と出会っていると云う事、そう、前世で・・・

何度繰り返しても、私はこの季節に彼女と出会っていた。

そして、悲しい事に何時も私達の別れは死だった・・・

月が三度姿を消しては現れたその夜。

『・・・私、もしかしたら昔に貴女と逢った事があるような気がします・・・』

ああ、忘れていたよ。

君は何時も最初は思い出せないでいたんだったね・・・

それでも、彼女は私と日々を過ごしていくと少しずつ、砂時計の砂が堕ちていく時のようにゆっくりと・・・

そして・・・砂時計が全て時を刻んだ時、運命は繰り返される。

そう、今生でもそうだった。

全て知っていたのに・・・避ける事が出来なかった・・・

彼女は運命を受け入れる時は微笑っていた。

何時もそうだった。

ずっとずっと・・・前世から・・・

決まっていた事だった・・・

私は手の甲を噛み千切った。

赫い液体が露わになった肉から滲み出てくる。

口に残った肉片を其の場に吐き捨てる。

手首を其の液体が伝う。

此れが・・・此れさえなければ・・・・・・こんな運命なんか・・・止められたのに・・・

そして黒い薔薇の花束を目の前の墓石に添え、私は其処から立ち去った。

自らの運命を受け入れる為に・・・





12月6日

REVERSE EMPRESS†REVERSE FORTUNE
 【春歌×鞠絵】



手を伸ばせば届くはずだった。

貴女はそれに応えてくれると思っていた。

貴女は私から離れて行かないと思っていた。

何時までも手を繋いで、貴女の前を歩いて導いているつもりだった。

まるで彷徨う冒険者のように見知らぬ今日と云う枝分かれする道の中で見えない明日を探していた。

道を見失ったら振り返る。

其処には貴女が居て、何時でも笑顔で居てくれた。

貴女が居たから、倖せだった。

貴女が居たから、楽しかった。

けど、今貴女は居ない。

過去形で思い出される思い出。

進行形で進む孤独な現実。

後悔する位なら、もっと貴女に触れたかった。

もっと愛したかった。

もっと、もっと・・・希望だらけの後悔。

希望を叶えられなかったからこその後悔。

さようなら・・・私は貴女と過ごした日々を忘れない。

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